『風たちぬ』ぶりの純愛悲劇を映画館でみた。原案のタイトルは『日々の泡』。はかなく切ないシンプルなストーリーの中には沢山の仕掛けがある。かっこいいセリフが多いから、その意味を考えるために、繰り返し見たい。前半はカラフル。後半は彩度を失っていく。インターナショナルでは残酷すぎる(長すぎる?)という理由で、カットされた40分あまりのシーンが入ったディレクターズカットバージョンが日本で公開されていたので、観に行った。
魅力1: へんてこ世界のテクノロジー
普通はありえないような技術のインフラが存在し、生物たちが生息している、"当たり前の日常"をミシェル・ゴンドリーが絶好調なアナログで、具現化している。レトロフューチャーに弱い私には、「たまらん!」の連続だった!作り手の楽しさが伝わってくる。狂気の連続で、時々置いてけぼりになるが、クレイジーなのが当たり前で、寧ろ自分がどうかしちゃってるんじゃないかと疑ってしまうような、夢心地感覚が、最初から最後まで続く。それは、魔法の世界とも違うし、SFの世界とも全く違う。
なにかの拍子でパラドックスがおきて効率化の定義が変わってしまった架空の時代... アナログなテクノロジーで...。こじつけ感が子供の時見ていた、フリントストーンのモダン石器時代を思い出させた。ディスポーザーになってくれるゴミを食べる恐竜がいたり、フリントストーンの生活図鑑が大好きだったな。
魅力2: エモい音楽:
へんてこな世界の中で、とにかく変なのが"ビルクモア"と呼ばれるダンス。主人公の二人が出会うきっかけのパーティーで踊ったロマンチックにファニーに踊るシーンが印象的だ。1930~40年代くらいのジャズミュージシャン、Duke ElintonのChloeという曲が流れて、それにあわせて男女がふにゃふにゃ踊る。踊ってるうちに腕や足がふにゃふにゃになり、部屋が曲がっていく。このChloeという曲がすごく不思議な時代で生まれた歌なんじゃないかって気になっちゃって、私はしょっちゅう聞いていてしまう。や〜や〜ややや〜
あと、その時代のポピュラーミュージックという設定で、二人の初デートの時の空の浮遊で使われていた。Etinne Charryのthe rest of my life。この手のピアノの伴奏バックに、ウィスパーで歌う歌ってなんか懐かしくて愛おしい。個人的かもしれなが、私はSonic Youthとか、The Smithsとか、My bloody Valentineとかカヒミ・カリィとか、そういう曲を聞くと、胸がチクチクするほど小っ恥ずかしくなる愛しさと懐かしさが溢れる。文化好きそうな主人公が、僕はポピュラーな音楽が嫌いだ!といってその音楽がステレオからながれてくるとラジオを叩いて止めようとする。その仕草も実際、恥ずかしく愛しい。
魅力3:フランス的 価値観が色濃い
実存主義者と呼ばれている、サルトルにそっくりなガチャ目の革命家のおじさんパルトルの言葉がまったく最後までわからない。それが消費されている。
パルトル中毒の親友(主人公より階級が低いようにも見える)。彼の何かが崩れていく様も見物である....
絶望するかもしれないけど、ぜひ!みるべし!いつの時代か、どこの世界かわからないけど、恋愛感情とか時代の流れに対してのやるせなさなどエモーショナルな部分はいつの日も同じである。
Emi
Vogue Blog より